全国公開記念『NINIFUNI』爪痕残すぜトークショーレポート第2弾! 松江哲明監督×真利子哲也監督

全国絶賛公開中の『NINIFUNI』。現在上映中の金沢・シネモンド、沖縄・桜坂劇場では5/18(金)まで。さらに5/19(土)より大分シネマ5、5/26(土)静岡シネ・ギャラリー、6/9(土)シネマ尾道、札幌と公開が続き、7/9(月)爆音映画祭吉祥寺バウスシアターで、ふたたび東京にカミングバック!

「爪痕残すぜ」トークショー第2弾のゲストは、真利子哲也監督と旧知の間柄である松江哲明監督さん。
初期作『ほぞ』から『NINIFUNI』まで、松江節で鋭く、真利子映画の魅力、凄さ、恐さを語って頂きました。

今までうまく言葉に出来なかったけど、『NINIFUNI』で真利子の視点が怖いんだって気づいた



左から松江哲明監督、真利子哲也監督


松江監督:僕は、『NINIFUNI』すごくびっくりしたので、積極的にレビューとかも書かせてもらったし、去年のベスト10にも入れさせていただきました。
試写で観た時に、真利子くんに「これはもう全く面白くしようとしていないのが素晴らしい」と。サービス過剰な映画ではなくて、お客さんを挑発するような、久々にこういうのを観たなと思って。

10年前「すごい映画があるよ」と調布映画祭に真利子監督の『極東のマンション』を観に行き仰天したという松江監督。そのときの出会いから、『極東のマンション』、『マリコ三十騎』で2年連続ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞した後、東京藝術大学院に入学した真利子監督の話に。

松江監督:『極東のマンション』は真利子くんのセルフドキュメンタリーなんですけど。日常を8mmフィルムで撮りながら、突然カンボジアに行ったりね。カンボジア行って、裸で街中走ったりするんですよ。そこまでは、よくセルフドキュメンタリーで観てきたんですけど、『極東のマンション』がすごいのが、そこにお母さんのツッコミをいれるんですよね。「あんたもう止めてよ、こういうの恥ずかしいから」とか「あんた、こういうの捕まるよ」とか「母さんもっときれいな花とか見たい」とかね、容赦のないツッコミが入るんだよね。その後も『マリコ三十騎』とか本当ハチャメチャな、ハチャメチャと言っていいか、すごく切実でいて、エンターテインメント性のあるすごいなと思って。僕はずっとファンでいたんですけど、あろうことか芸大に入って。
でも真利子が「卒業制作はぜひ観てください。気合い入れたので」と、それで観たのが『イエローキッド』だったんですよ。『イエローキッド』はすごく面白いなと思って。ただ『イエローキッド』より、僕は『NINIFUNI』に本当に仰天して。この間、はじめて真利子くんのすごいところに気付いて、それは真利子が1番怖いんだってこと。10年付き合ってきて、真利子のなんかこう、セルフドキュメンタリーでみた暴力性というか『ほぞ』っていう1本目の作品からしても血まみれになっていますから、彼は。そういうとんでもないのがあるんですけど、今までうまく言葉に出来なかった。『NINIFUNI』を観たときに、真利子の視点が怖いんだっていう風にはじめて気付いたんですよね。真利子くんが一番撮りたかったカット、よくあんなの思いつくよね?

真利子監督:脚本の竹馬くんと話しをしていく中で、一番はじめにあの映像が浮かんだんですよ。実際のロケ場所が事件の現場ではあったんですけど。実際の場所に行ったらイメージと違う、駐車場だったので。ちょっとした変更はしているんですけど、やっぱりあの画が浮かんで、何とも言えない感触になって。それを撮りたいっていうのがあって、この映画を撮ったんですけど。

松江監督:はじめて観た時もゾッとしたけど、あのカットが出てきたとき。前半ずっとこのままいくのと思って40分。いやだなーと思ってたんですよ、僕。皆さんもたぶん近いことをおっしゃると思います、そしたら突然ももクロのPVがはじまって「何考えてんだ、コイツは」と思っていたら、あのカットですよ!

真利子監督:ほんとうに、撮る前からももクロにも自信があったので。この子たちのまま出ればきっと面白いっていう。だから前半も逆に振り切れたんですよ。メンバーにはじめ脚本を見せた時に、「分からない」っていうことを言われて、またこっちも説明もできないという申し訳なさがあったので、本人たちには「ももクロらしくやってくれ」、「いつも以上のももクロでやってくれ」と。元々、日本一のアイドルグループという気持ちで頼んでいるので、その想いを伝えて、それで十分だったかなという。

松江監督:たぶんね、真利子の今までの映画で1番、フレームの外が見える映画なんだと思う。『イエローキッド』とかってさ、やっぱフレームの中っていうか世界観をつくろうとしてる映画じゃない、でセルフドキュメンタリーと真利子のフィクションの違いって、僕そこだと思ってて。ドキュメンタリーの場合はまず、世界があってその中で真利子がカメラでそこを掴むというかさ、撮ろうとしてるけど。フィクションの場合って作り込もうとするから、だからそこがまどろっこしいなっていうのが正直あったんだよね。『NINIFUNI』は、そうじゃなくて、まずこの世界ありきというか。

松江監督が終始リードする形で展開された2人の掛け合いに、客席からは何度も笑いが起こり、なごやかムード。

最後に真利子ファンである松江監督からリクエスト「『NINIFUNI』は真利子の視点が十分伝わるし、お客さんにも伝わるし。作り手とかで、これで気付かない人とかいたら、もちろんそういう人もいるだろうけど、僕はこれに気付く人がすごい面白いなと思うし、そこに気付いた人が、またこんなのはどうですか?っていう出会いがあって、真利子が引っ張られてつくる映画があると面白いなと思いました。」

ロカルノロッテルダム、チョンジュ、世界が注目する衝撃作『NINIFUNI』は、全国順次公開中!
5/19(土)より大分シネマ5、5/26(土)より静岡シネ・ギャラリー、6/9(土)よりシネマ尾道、札幌・シアターキノ(近日)、ほか全国順次ロードショー